スーパーボウルと農業の現場と・

もはやこの言葉がふさわしいのか・・

物事を新たに生み出す人や、新たな時代を切り拓く人はいつの時代も必ず存在する。「今まで」や「みんなと一緒」という言葉を一生使って生きる人とそもそもの生き方が違う。43歳であのスーパーボウルで7回の優勝を手にしたQBのトムブレイディ。

昨年までの優勝常連とまで言われたチームから移籍しての今期の優勝は、明らかにこの43歳の彼の偉業であり、「今まで」使われなった「今年も!」「また!」トムブレイディがスーパーボウル優勝の立役者となった。

当然、43歳なので肉体的なピークは過ぎている。しかもプロの世界。毎年毎年、年俸数億円で契約されるような超ビッグスター選手がドラフトでピックアップされる厳しい世界で、毎年コンディションを整えて試合に出続ける凄さは想像に計り知れない・・。しかも戦略がモノをいうスポーツの世界の司令塔。毎年毎年、スカウティングして相手チームも完璧な戦略で戦ってくる。にもかかわらず勝ち続けるのは、肉体のみならず「頭のコンディション作り」がそれ以上にあるからで、リアルスーパーマンだ。

以前、元中日ドラゴンズ山本昌選手の番組があって観ていたが、彼は入団して間もなくクビになりかけていた選手だったし、プロに入って1勝する事が彼の目標だったと語っていた。それが50歳まで現役を続け、200勝以上の功績を残したプロ野球界に名を残す大投手になったのは、彼の「練習量」と「自己分析能力」と取り組む「姿勢」だなと感じた。

彼は40歳をすぎてから1日も練習を休んだことが無いと言っていた。若い時は1日休んでも次に日に、3日あれば・・と取り戻せたが、年齢を重ねるにつれて取り戻す期間が延びてゆくことを感じて、休むともう取り戻せなくなるから休まなくなったという事。

キャンプ中も他の選手がバスに乗ってグランドまで移動するにもかかわらず、自分はランニングで宿舎とグランドを移動していたことなど。そして40歳を過ぎた自分が50歳までプロの世界にい続けることが出来て、なお勝利できたのは40歳になるまでの練習、走った貯金があったからだと言っていたことは印象的だった。

どの世界においてもプロの世界で長く活躍される方々は、時代が変わっても、その方法が変わっても、科学が進んでも自分のコンディション作りや環境作りを自分で行うという事や、そのためにきっちりと時間とお金をかけて投資し、結果の「当たり前」を維持し続けることは変わらない。

そういう物事に取り組む「姿勢」を次世代が学びにくるわけで、「金」で人は集まらないし、いくら時間や金を使っても「姿勢」は見せられない。

農業や森林の1次産業の現場も同じことで、目の前の「今だけ、金だけ、自分だけ」発想でいてもセンスのいい人間は年齢関係なく「こういうことは続かないだろうな」と取り組む「姿勢」をすぐ見抜くし、それを見抜けない時点で生き残って行くだけ長期的視点から見た、自己分析能力が問われる。土から、森の中から「今だけ、自分だけ」を肥やしたり、楽をして次世代のための「時間」や「養分」を搾取し続けると、そこに次世代が育つために必要な「姿勢」つまり「教育」という変化に対応するだけの遺伝子を残す事が出来ないし、いくらそこに種子を落とそうともそれが育つだけの「土壌環境」がもはやそこにないと、その種子は「昭和の温暖な気候レベルの遺伝子」では生き残れず、「令和の激動に対応するだけの遺伝子」を持った種子が生き残る。

そもそも次世代に受け継ぐ時点で、受け継いだ種子の遺伝子の組成は変化しない。その後の環境要因で求められる対応力で変化は可能だが、対応力が身につくまではそもそも種子の遺伝子レベルが左右されるので、そこに達するまでの優位性は、やはり大きい方が生存競争で勝ち残る可能性ははるかに高い。

一次産業という職業もスポーツの世界も、環境因子を作るのは先を生きる人間の器で決まる。今だけしか見えずに、自分が楽をして搾取すれば次世代が育つことはあり得ないし、その後を見据えればその養分も少し残して、次世代が育つためのたい肥や養分を残しつつ、朽ち果ててもなお自分も次世代が育つ養分になろうとするかまでが視野にあるか否かは、今の「姿勢」を観ていれば容易に判断できる。

そういう学びが多い豊かな環境には、やはりポテンシャルの高い遺伝子を持った種子が集まるし、そういう環境は様々な環境要因に強い種子がまた交配されてゆくので、多様性を「遺伝子レベルで」変化する、環境要因に左右されない強い種子が生き残るというサイクルが形成されてゆく。

金のサイクルでものを考えていると短期的なサイクルでしかものを捉えられなくなるが、生物のサイクルはそんな短い目に見えるサイクルだけで成り立っているものではない。環境のサイクルなんて何百年ものサイクルだし、人の遺伝子のサイクルも数十年のサイクル。しかも人間のような高等生物になればなるほど、構成する遺伝子も複雑化して行くので、遺伝子変異を起こすことも難しくなるし、複雑化すればするほど起因する要因を特定する事が難しくなるもの。

今の結果は「今まで」の蓄積が構成している。

令和の環境を生き残る遺伝子をもった種子はもう撒かれた結果でしかない。

「姿勢」を学ぶ環境で育った種子か否かのような気がする。