切り口の違い

自分たちが野球部だったころは「ボールは体の正面でとれ!」と言われて
打球に対して打者の正面に回り込んで体の正面で捕球しろと言われてきた。

が・・・
「プロ」野球選手の正面というのは全く違う。
もちろん、だから「プロ」なのであるが・・
打者に対して正対して捕球するだけが「正面」ではなく、
「自分の体に対して」正対していればそれが正面でしょと。
つまり、打者に対して体が平行であろうと、垂直であろうと、斜め向いていようと
自分の体に対して正面の状態で捕球できればいいし、そもそも捕球することが目的ではなく、
捕球した後送球し、「打者をアウトにすること」が目的だからだ。

そして、ゲームの目的は打者をアウトにすることではなく、その先の「ゲームの勝利」が目的にあるからだ。

自分が、農業を始めていまだに感じることは、まさにこの「昭和の野球」の感覚である。
回り込んで、何が何でも正面でボールを取る練習を朝から晩までやることがいまだに大好きで、
いまだに正面は一つしかない。そのおかげで、取りこぼす球は多い。

そんなことよりも、「正面」の概念をいち早く広げて、様々な正面の捕球の仕方を練習し、
様々な捕球体制から送球する練習を行う方がより実践的だし、捕球できる守備範囲は各段にあがる。

「正面」という「切り口」に「こだわる」あまり、思考の範囲、選択の範囲を狭めているだけで、
切り口、視点を変えるだけで取りこぼしているものを拾えるものはたくさんある。
捕球しないものは、アウトにできないので、つまりはゲームに勝利できるわけはない。

試合会場での条件は同じである。
自分が暑ければ、相手も暑い。
雨が降れば、相手も雨の中で戦っている。
足がぬかるのも、バットがすべるのも全く同じ条件で試合は行われる。

農業という仕事もまあ同じ。
劇的な正攻法などあるわけはない。

同条件の中、いかに無理・無駄・ムラを感じ、見つけ、修正、改善するという「切り口」から
アプローチするか否かだけの差のように思える。