今でもやっぱり、隣のじいちゃんがすごいと思う

農業を始めて18年目になる。
たくさんの農家の方々とお会いしてきたが、いまだに隣にいらっしゃった80歳になるまで
ご夫婦で農業をされて引退されたおじいさんとおばあさん。
本当に尊敬していますし、素晴らしい農家だとずっと思っています。

このご夫婦には、隣に越してきてから一度も「よそ者」と言われたことがなく、
「これからはもう若い人たちが考えればいいんだよ。今までのことは今までの人間がすればいいし、今からのことは今からの人に任せればいい。わしらはついてくだけだから」とずっとおっしゃってました。

春と秋のお祭りには必ず、おばあさんが作ったどら焼きとポテトサラダを「作ったから食べてよ」
と持ってきてくれた。おばあさんはとても器用な方で、ちゃんと袋まで用意して売り物みたいに
して持ってきてくれた。
毎日毎日、雨の日以外は必ず畑で仕事をし、畑も見事にきれいにされていた。
晴れの日に畑で見ない日はなかった。
畦草も淡々とお二人で刈っていたし、仕事もおじいさんが用意を始めるとおばあさんがぽつぽつ歩いてきて
スタート地点で待っている、おじいさんが到着すると準備を始めて、おじいさんが何を言うでもなくいつの間にか
仕事が始まって、いつの間にか終わって行く。怒鳴るでもなく、走るでもなく、ただ淡々と仕事をこなしていた。

毎日がプロフェッショナルの仕事の繰り返しであった。
これこそが無駄のないプロの技である!というのを隣で毎日見て学べたことは大きかった。

もちろん、本を書くわけでなく、講演会を依頼されるわけでもなく、何億円も売るわけでもないが、いつも言うことは曲がったことは言わない、やらない。御年80歳まで経理も基本は自分でされていたし、人に迷惑をかけるのが嫌だと言っていた。おばあさんが花が好きで、家の周りもいつも花を植えてきれいにしていたし、納屋の中も家の周りも本当にきれいだった。お人柄がすべてにおいて出ている方でした。

農家を辞めると決めた最後の年に畦でこんなことを話したのがいまだに忘れられない。
「私もまだまだ若くて体が元気だったら農家やりたいよ。農家好きだからねえ。でも年には勝てんねえ。さみしいけどいつかは辞めんならんもんねえ」と。
こういう気持ちでずっと来られたから作るものも素晴らしかったし、楽しかったから毎日毎日畑で仕事をされてたんだろうなあと感じた。

今でもおじいさんとおばあさんは「漬物つけたから食べんかい?」ともってきていただける。
だからうちも、ほうれん草や白菜が出来ると持ってゆく。
本当に最初からお世話していただいたし、様々なことを学ばせていただいた。
自分の中ではいまだにこのおじいさんとおばあさんがやっぱりすごい農家。

今年もアスパラが取れ始めたので、持って行ってまたお元気な顔を見てこようと思う。