顔の見える野菜

顔の見える野菜。

生産者の顔写真が張ってあって、生産地が書いてあると顔の見える野菜?
生産履歴や、使用している肥料が書いてあれば顔の見える野菜?
私用した農薬と使用回数が分かれば顔の見える野菜?

自分はそうは思わない。
顔の見える野菜とは、生産者の思いや、土作りにかける情熱、食べてもらう側の喜ぶ顔、うちの野菜のとりこにしてやるぞという思い、こんな大変な思いまでして作ってるんですかという驚きなどなど
双方が双方の思いや、気遣い、共感などが共有できることがあって初めて顔の見える野菜なのではないかと思う。

それは本当は、畑にきて、本気で食べる人のことを考えている農家の土を触ってもらいたいと思うし、プライドをもって夜中まで電気をつけてまで作物を見回って作る農家の姿を見てもらいたいし、作物の色を見ただけで栄養のバランスを一瞬で見抜くプロの技を見てもらいたいし、何よりも、この仕事が楽しくてしょうがないんだ!という姿勢を感じてもらいたい。
パソコンつの画面では伝わらない、トマトの香り。触らないと分からないフワフワの土とその香り。ここからしか見えない見晴らしの良い景色。

熱意のあるレストランのシェフは、うちの野菜を使うときには必ずうちまで来るんですよ。
なぜだかわかりますか?
「押谷さんのこの野菜を使う時期の畑の様子や、この野菜の育っている環境、土の状態、使っている肥料、育っている状況、生でかじった感じ・・いろいろなことが分かっていないとこの野菜の盛り付けのイメージが出来ないんですよ。押谷さんの思いと、畑を食べる人に伝えたいんです」と。

また、うちの野菜を仕入れて売っていただいてる仲卸の方も熱心に土のことや、農業に取り組む姿勢に耳を傾けて質問していかれます。

うちは、押谷さんの野菜を仕入れたいんですよ。
うちは、ここのアスパラをたべるために1年間ほかのアスパラは買わずに待ってます。
うちはこのトマトじゃないと自分の求めるソースは出来ないんです。だから、使いたいんです。

こう言って頂いてやる気が出ないわけがないですよ。

あのシェフはたぶんこうやって使うんだろうな?と想像しながら使う肥料を選ぶのはワクワクする。
去年よりもさらにおいしくするには、どこを出して、どこを引っ込めればあの人はおいしいというだろうか?と考えれば夜も眠れないが、それが楽しい。

あの人の、あの料理屋さんの、あのいつも春にうちに買いに来てくれるおばあちゃんの・・・あの顔が浮かぶ人たちのために・・・が本当の顔の見える関係じゃないのかな?と思う。