答えのない場所でいくら答えを探しても・・

農業を始めて20年以上がたつが、年々産業としてのスピード感が増してくるのと、小さな世界観や歴史観で産業を捉えていてももう限界点を超えてきたなと感じる。

そもそも(農業だけに限らず)が変化してしまうと、あるいはそもそもが最初から間違った方向に進んでいるのに気づかないでいると、それはどこまで進んでもそれは永遠にゴールにつくことはあり得ない。

間違った答えしか持たない中でいくら議論をしても、考えを巡らせても、全て浪費と徒労に終わる。ずっと続けてきたことの延長線上でミスが起こり続けているということ、或いは何かに修正してもらわないと成り立たなくなっている事などは、そもそもそのシステムは最初から崩壊している上に乗っかているだけのこと。それが時代の変化で露呈して行くだけの話。こつこつと基礎から築いた沈まない基礎の上に立つ「まっすぐの柱」に支えられた建物はどこまで行こうとその重さに耐え得るが、沈む基礎や足元から曲がった柱の上の建物は、上物が大きくなってくればそれに耐えきれずいつかは崩壊してしまうのと同じこと。だからそもそもに気付かないと、どれだけやろうとも毎回ミスをする場所は同じ。それ以上前には進まない。

自分は大学時代にアメリカンフットボールをやっていたが、わがチームはほぼ万年最下位を争うヘボチームだった。当たり前の話だが、万年最下位ということは「考え方」「行動」「メンタル」「フィジカル」全てにおいて最下位だったから。

つまり、朝から晩までいくら練習しようと、首や肩や膝を痛めようと、ただ痛いだけ、ただしんどいだけの事に時間を使っていたので「根性」と「体力」はつくけれどまったく「勝利する」という方向には向かっていなかったし、アホだったからそれを俯瞰的に見て、俯瞰的に考えるということができなかった。つまり、いくら考えても議論しても、答えを待たない環境下では答えなど絶対に出ない。

そこにオールジャパンのコーチが来ていただくことになると、そこからすべてが変わった。それはまるで、野村克也氏が携わったチーム、自由契約になった選手を復活させた時と全く同じだった。

答えは簡単で、そもそもの「方向性」と「考え方」「取り組み方」が間違っているということに「気づく」という事から始まったから。

まあどんな組織にもよくあることだが、変わらない組織や人はその「気づく」ということがないのでずっと変わらない。だから負け続ける。

「勝つ」組織は、まず「気づく」し、「勝ち続ける」組織は「気づき続ける」ので、変化し続けるから勝ち続けることができるということを学ぶ。

まず、基礎と基本が出来ていないことから始まった。一番大切な「走り方」や「姿勢」が全くできていなかったので、タックルされればすぐにこけていた。

コーチは「お前らが今のままの走り方で走っても、そのままタックルしても今のままやで。時間には限りがある。大学生活は4年間しかない。一回今のやり方を捨ててやり直すってことは、お前らからしたら「目の前は」マイナスやって思うやろうけど、それが一番勝つための近道になる。お前らが本気で勝ちたいんやったらやり直したらええし、今のままで負け続けたいんやったら今のままでええねん。決めるのはお前らや。」と。

当然勝ちたいので「自分たちで」やると決めて、基礎から全部やり直した。すると本当に日々日々強くなっていった。タックルされてもこけない。タックルは決まる。戦略はハマる。当然結果がついてくると、その結果がどういう「過程」で導き出されているかが「理解」できるので自分たちで考えるようになる。

結局のところ、そもそもの「基礎」「方向性」が間違っていることに「気づかない」とどれだけ時間や労力を使っても結果は出ないし、そこがちゃんと出来ていれば短期間でも明確に結果が出るということを学んだ。

これは仕事においても全く同じことだが、自営業者には「コーチ」はいない。自分がコーチであり監督だから。

組織や集団を動かすには、トップになる人間が「そもそも」を理解していないと組織全体が間違った方向に動くのは至極当然のこと。

トップの最大の役割は、答えを持っていることが正解ではなくて、いつも目的に対して正しい方向性に進んでいるのか否かを判断できる能力と、それに気づいたときに修正したり、時にはそこまでの事を捨て去ってでも、新たなことに挑戦するという「決断」ができるということだと思う。

それを躊躇したり、惰性に流されたりしているようでは「有限な時間」の範囲で結果は出ない。つまり、負ける組織だし、一度そうなると負け続ける組織になる。

なぜか?

負け続けることに「慣れてしまう」から。そしてそういう環境に慣れてしまうとそれが「習慣」になってしまうから。そしてそうなると「類は友を呼ぶ」のでその習慣を持つ環境が出来てしまう。もうそこには「文句」「傷のなめ合い」「責任転嫁」しか残らなくなる。そんな場所にもう修正する答えもモチベーションもない。

もう終わりの組織や思考から抜け出して、かつ、結果にまで結びつけるという経験ができる人は少ないと思う。だけど、こういう「損得のない」経験を若いうちにしたか、してこなかったかは、大きいなと感じる。

ミスをし続ける、負け続けるということは、もうその延長線上に応えは存在しない。だからどこの時点からかやり直さない限りまた負ける。

でもそれをやり直せるだけの「メンタル」「フィジカル」「資金力」そしてそれを受け入れる「意識改革」の時間は、過ぎたものはもう取り返せないし、有限の時間の中ではもう間に合わないこともある。

若いうちに「答えのない場所でこだわっていても無駄」だということに気付かせてもらえた事は、ずっと役に立っている。

そしてこういう人に出会えたことは自分はラッキーだし、その環境を作っていただいた方々にも今もずっと感謝している。